☆アメリカのマーケティング事情について、NY在住ライター須能玲奈さんにレポートいただきました。

スマートフォンの普及とともに、企業の広告宣伝の方法は大きく変わりつつあります。その中でも、今や企業の売上を左右するほどの影響力を持つまでになったのが、Instagramを活用したマーケティングです。

Instagram発祥の地アメリカでは、Instagramを効果的に活用し成功を収めている会社が数多くあります。そうした会社を紐解いていくと、多額の予算を使ってキャンペーンを打ち出した有名企業から、夫婦で始めた家族経営のベンチャー企業まで、さまざまな会社像が浮かび上がってきます。
今回は、アメリカでInstagramを使ったマーケティングに成功した会社について、具体例を挙げながら、その成功の要因を探ってみたいと思います。

1)adidas社:顧客層に合わせた手法で24%もの売上アップに成功

adidas社は2012年に、時代の変化に敏感な若い層を対象とした商品ライン「adidas Neo」を立ち上げました。
対象とする顧客層がSNSを頻繁に利用する世代であったことから、2015年に #MyNeoShoot というSNSキャンペーンを実施。これによって、同業他社であるNike社が9%の売上減少となっていた2015年1月~2016年1月に、24%もの売上増加を果たしました。

adidas社の広告宣伝の戦略には、次の3つの特徴があります。

1.#MyNeoShoot キャンペーンの周知徹底を図るために、キャンペーンイメージに合致し、かつInstagramでも人気の歌手、セレーナ・ゴメスを起用。

2.Instagram上で影響力のある「インフルエンサー」と提携し、ハッシュタグを効果的に利用した投稿をしてもらうことで、キャンペーンを更に普及。

3.#MyNeoShoot というハッシュタグで、adidas Neoの商品を身に着けた写真を世界中の人たちに投稿してもらい、その中から選ばれた6人をニューオーリンズでの撮影会に招待する、というファンにとって夢のような企画を実施。その結果、ターゲットとする顧客層に商品をより身近に感じてもらうことに成功。

adidas社のInstagram戦略は、
①有名人やインフルエンサーの協力のもとで商品を多くの人に知ってもらう
②一般人が参加できるキャンペーンを実施し、対象となる顧客と商品を結びつける
という大規模なものでした。

こうしたadidas社の戦略には多くの広告宣伝費を要しますが、商品の対象となる顧客層とInstagramを利用する世代が一致していたことも功を奏して、キャンペーンは大成功。Instagramを利用したキャンペーンの成功例として、アメリカの多くのサイトで紹介されています。

2)Airbnb社:多様な文化や宗教に寛容な立場をアピールしてイメージアップ

民泊サイトの先駆けであるAirbnb社は、顧客参加型による一味違ったInstagram戦略で、企業価値を高めることに成功しました。

普段は、世界各地の夢あふれる宿泊先の写真で埋め尽くされているAirbnb社のInstagram。2017年に、今までとは全く違った趣向の写真が #WeAccept というハッシュタグとともに次々に登場して、注目を集めました。

テレビCMでも流れた映像です。

Acceptance starts with all of us. #WeAccept

Airbnbさん(@airbnb)がシェアした投稿 –

2017年は、トランプ政権が誕生し、移民に対する厳しい政策が次々と打ち出され、アメリカの経済や社会を支えてきた移民たちが不安を募らせていた時期でした。

世界中で事業を展開し、顧客層も幅広いAirbnb社は、「多様な人種や宗教、文化に寛容である」という会社の立場を、まずテレビCMを通じて表明。その直後に、#WeAccept のハッシュタグで、CMに登場した人たちの写真をInstagramに掲載しました。彼らが自らの言葉で語った自分史は、臨場感があり、多くの人々の心に響きました。

また、Airbnb社は、User Generated Contents(ユーザー生成コンテンツ)と呼ばれる一般人参加型の手法を多用して多くのファンを集めています。

全世界でのソーシャルマーケティング戦略のトップであるエリック氏は、「人々が旅行する理由を聞き、その話を我々のサイトをフォローしてくれている人たちに還元することが私たちの仕事」と話しています。

Airbnb社の顧客に寄り添った姿勢は、世界中のユーザー(貸主と借主)をInstagramでつなぐことに成功し、気に入った物件に泊まった借主がその体験をInstagramでシェアすることで、さらなる広がりを見せています。

▽実際の顧客の投稿をクレジットをつけて再投稿したもの

3)Glossier社:独自の販売プログラムで競争が激しいコスメ業界を勝ち抜く

2014年創業の化粧品会社Glossier社は、コスメ業界の後発企業にもかかわらず、独自のInstagram戦略を通じて多くの女性たちを虜にしました。

Glossier社が注目したのは、フォロワーが少ない無名のインフルエンサーたちでした。一人ひとりによる影響力は弱いかもしれませんが、彼女たちが頻繁に更新を続けた地道な努力が実り、ブランドは草の根的に広がっていきました。

また、Instagramを活用した販売員制度もGlossier社のSNS戦略の特徴です。販売員となった人たちは、公式サイト上に自分のページを作ることができます。そして、このページからの売上の一部が、コミッションとして販売員へ還元される仕組みとなっています。

▽販売員の一人、KelseyさんのInstagram。

Glossier を含む多くのブランドの化粧品が、きれいな写真とともに紹介されています。プロフィール内に書かれたリンクをクリックすると、Glossier社の彼女のページに飛びます。

▽Kelseyさんのページ

Glossier社の商品のファンである販売員たちにとって、まだ世に出ていない情報を一足先に得られるというのは、商品のコミッションをもらうこと以上の栄誉です。そして、彼女たちの投稿は、Glossier社の商品の多様な使い方の提案にも一役買っています。

当初11人で始まった販売員制度は、今では500人に広がりました。販売員たちはGlossier社の社員ではなく、他に本業を持っていますが、Glossier社の名刺を持ち、いわば会社の一員として活動しています。

▽優秀な販売員たちを集めて開かれたイベント。Glossier社のファンたちがニューヨークに集まった。

4)Letterfolk社:知名度ゼロの家族経営からInstagramで一躍有名に

子供の成長を写真に収める際におしゃれなボードがあったら…という思いがきっかけで夫婦が立ち上げた小さなビジネスは、Instagramでの投稿で大成功を収めました。家やお店に飾る看板を作っているLetterfolk社です。

広告宣伝に使える予算が少ないため、有名人やインフルエンサーを起用することはできませんが、自らの顧客となる一般消費者に親近感を持ってもらえるような、日常生活を中心とした写真とユーモアあふれるメッセージを組み合わせて投稿。多くの人の心をつかみました。

「もし金曜日に顔があるとしたら、こんな顔」。週末を控えたうきうきした気持ちを笑顔の赤ちゃんとともに投稿。

人気を集めた投稿の一つが、「ちらかっているのは気にしないで。私が片付けなさいと怒っているのは、子供たちの良い思い出なのだから」というもの。ちらかった部屋を皮肉ったユニークな投稿です。
この会社の主な顧客層でもある幼い子供を持つ両親の間で、この投稿は大きな反響を呼び、友人たちにシェアされる形で広まりました。

And I’m making memories of them completely ignoring me. 📷: @mistylefrandt

Letterfolkさん(@letterfolk)がシェアした投稿 –

Letterfolk社の取り組みは、中小企業によるInstagram活用の成功例として注目を集めています。大規模な広告を打たなくても、効果的な写真とキャッチフレーズのみで、対象とする顧客層に効果的なアプローチを行うことができている事例です。

5)まとめ

Instagramを使ったマーケティングに成功した企業を4社ご紹介しました。こうして見てみると、会社の規模や対象とする顧客層によって、さまざまな戦略が浮かびあがってきます。

ここで取り上げた企業はいずれも、自らの商品を一番使ってもらいたい顧客層へアピールすることに成功し、企業価値を高めていきました。Instagramを通じて、求めている顧客層へ最適な方法で適切なメッセージを伝え続け、顧客に自社の商品への親近感を持ってもらうことが鍵を握っていると言えそうです。

須能玲奈(SUNO, Rena)
東京出身。2009年からNY在住。日米の公認会計士として独自のリサーチ力と洞察力を生かし、ビジネスから文化、生活全般についてNYを切り口とした記事を執筆。NYを拠点に日本文化を発信するJ-Collabo(https://www.j-collabo.org/blog)とブルックリン専門サイトBrooklyn Calling(http://brooklyn-calling.net/)の専属ライター。

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